はじめに
「GPSウォッチがないと不安」「ペースがわからなくなると走れない」──そんな声を、ランナーからよく聞きます。
今やGPSウォッチはランニングに欠かせない道具ですが、一方で“感覚で走る力”を置き去りにしている人も多いのが現実。
実際、僕自身も昔はウォッチが命。ペースを見ないと不安で、心拍や距離、スプリットにばかり目を取られていました。でも、あるときふと「このままでは“時計が壊れたら走れない人”になってしまう」と気づいたんです。
この記事では、そんな「GPS依存」から抜け出し、自分の“脚と心”で走る力を取り戻すための練習法をご紹介します。初心者でも今すぐ始められる実践方法を中心に、失敗しがちなポイントや成功へのコツも解説しています。
1. ペース感覚とは何か?
「ペース感覚」というと抽象的に聞こえるかもしれませんが、簡単に言えば:
今、自分がどのくらいの速さで走っているかを、体感で判断できる能力。
この感覚は、以下のような体のサインから得られます:
- 呼吸の深さとリズム(浅くて速くなりすぎていないか)
- 脚の重さや着地の強さ
- 接地のリズムや音(ドスドス or 軽やか)
- フォームの乱れ(左右差や腕振りのクセ)
これらをもとに「いまはキロ5分台」「ちょっと上がりすぎたな」と感覚でわかるようになると、レース後半での失速防止やトレーニングの質の向上に直結します。
✅ GPSは便利だけど「ズレる」
特に高層ビルや山間部、カーブの多いコースでは、GPSが実際のペースと大きくズレることもあります。そんなときこそ、頼れるのは“自分の感覚”なんです。
2. 実践①|ペースブラインド走
● 目的:
自分の体感で一定ペースを刻む能力を養う
● やり方:
- GPSウォッチの画面を完全に隠す、または裏返してスタート
- 5〜10kmを“キロ◯分くらい”を意識しながら、一定ペースで走る
- 終了後に実際のラップを確認し、予想とのズレを記録・分析
● 具体例:
たとえば「今日は5:30/kmの感覚で走ってみよう」と決めて5km走ったあと、実際のラップを見ると:
- 1km:5:28
- 2km:5:31
- 3km:5:42 ← 気が抜けてた?
- 4km:5:29
- 5km:5:26
このように誤差やバラつきを可視化することで、「集中していた区間」「気持ちが緩んだ場面」がわかります。
● 注意点:
- 信号や起伏のあるコースは避ける(周回コースや河川敷が◎)
- 初回はズレて当然。大事なのは「振り返って修正する」こと
3. 実践②|ビルドアップジョグ
● 目的:
「少しずつ速くする」微調整能力を養う
● やり方:
- 例)9km走を3km×3本に分け、段階的にスピードアップ
- 時計は見ず、呼吸・脚・フォームの感覚で「少しだけ速く」を意識
● 練習例:
- 前半3km:6:00/km(完全ジョグ感覚)
- 中間3km:5:40/km(やや軽快)
- 最後3km:5:20/km(集中してフォームを崩さず)
● コツ:
- 呼吸が乱れる前で止める
- 最後まで「余裕を残す」感覚を優先
- 可能ならラストだけ時計を見て答え合わせしてもOK
4. 実践③|感覚インターバル
● 目的:
「このくらいが1km」「この強度なら3分半」など、身体感覚と距離・時間の結びつきを育てる
● やり方:
- 距離が明示されていない道で「1kmだと思う距離」を走る
- GPSで後から実測して誤差を確認
- 何度も行い、感覚と実測をすり合わせていく
● 成功イメージ:
- 最初は200〜300mズレてもOK
- 続けるうちに、「この疲労感ならあと500m残ってるな」など、かなり正確な予測ができるようになります
● ポイント:
- 週に1回、3〜5本で十分
- トレイルや坂道ではなく、平坦な道で実施を
5. よくある質問&失敗あるある
Q1. 感覚で走ると速くなりすぎてしまう…
→ よくあります。最初は興奮して突っ込みすぎます。スタート時に「これで遅いかな?」と思うくらいでOKです。
Q2. 周りの人と一緒だと感覚が狂う…
→ それも正常。人の呼吸音・足音に影響されることを逆に活かし、単独走とグループ走を使い分けましょう。
Q3. 体調によって感覚がバラバラになる
→ その通り。だからこそ、「一定の体調で、同じ条件で比べる」ことが大切。
6. まとめ:数字じゃない“走る力”を育てよう
感覚で走る力は、一朝一夕では身につきません。 でも、週に1回“時計を見ない時間”を設けるだけで、あなたのペース感覚は確実に研ぎ澄まされていきます。
そして何よりも、GPSでは得られない「自分で自分を信じて走る」感覚は、レース終盤やトラブル時に大きな武器となります。
今日のジョグ、1kmだけでも時計を見ずに走ってみませんか? それが、あなたの“本物の走力”を引き出す第一歩になるかもしれません。
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